サッカーの話をしよう
No.1073 ルールをみんなのものに
「ルールはみんなのものですから...」
日本サッカー協会の公式サイトに、今年度の競技規則(ルール)改正や解釈の変更などをまとめた約12分間の動画が掲載されている(http://www.jfa.jp/news/00009868/)。小川佳実審判委員長の強い要望によるものだ。ことし委員長となった小川氏は、「ルールは選手と審判員だけのものではありません」と語る。
サッカーは世界で最も多くの人に楽しまれているスポーツ。その競技人口は2億とも3億とも言われている。老若男女、プロアマを問わず、どんなレベルでもルールはまったく同じ。さらに10億人以上と言われる自らはプレーしないファン、たとえテレビでしか見ないファンも、同じルールを同じ解釈で理解し、サッカーを楽しんでいる。
そのルールが大きく書き替えられることは、2月24日付けの本コラムでも紹介した。サッカーのルールを決める国際サッカー評議会(IFBA)から通達されたことしの「ルール改正」は1項目だけ。守備側が攻撃側の決定的得点機会をペナルティーエリア内で阻止する反則について、「PK、退場、そして自動的に次の1試合出場停止」となるいわば「三重罰」だったものの一部をPKと警告だけにするという点だった。
だがルールブックの書き替え作業(改訂)により、実質的にはたくさんのルール改正が行われることになった。キックオフを自陣に向けてけってもいいことや、オフサイドによって与えられる間接FKの位置の変更など、従来とは大きく変わる点がある。
これまで、ルール改正は文書での通達という形だけだった。しかしことしは解釈や実質的な改正があまりに多岐にわたり、しかも言葉だけではわかりにくいため、日本協会は『2016/2017競技規則の改正について』と題したビデオを用意し、5月20日に公開した。IFBAから具体的な文書が届いたのが4月。小川委員長を始めとしたスタッフは休日返上で翻訳作業を進めると同時にビデオ編集に当たり、項目によっては新規撮影を行った。
新ルールは国際的には6月1日から有効となる。Jリーグや全国大会では7月に適用を開始するが、地域や都道府県の大会は遅くとも来年の4月1日までと、適用開始日を実情に合わせて柔軟に決めていいことになっている。
しかし今回日本協会が公開した動画は非常にわかりやすく、しかも改正項目は選手や観客にプラスになるものが多いため、意外に早く理解が進み、適用もスムーズになるのではないか。12分間の動画がルールを「みんなのもの」にしてくれそうだ。
(2016年5月25日)
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