サッカーの話をしよう

No.1080 選手とサポーターをつないで25シーズン、500号

 「偉大な仕事」とは、希有な才能によってなされるとは限らない。平凡な人びとが、ひとつの志の下、営々と続けることによって成し遂げられるもののほうが、この世の中にははるかに多い。
 浦和レッズがホームの公式戦ごとに制作・発行してきたマッチデープログラム(MDP)が今週日曜日(17日)の大宮戦で500号を迎える。Jリーグ最初の公式大会ナビスコ杯が開催された1992年9月5日から24年、足かけ25シーズンの偉業である。
 ただ「ホームゲーム500試合」は次の湘南戦(8月6日)。1997年5月の横浜フリューゲルス戦が雷雨で途中中止になり、改めて7月に行われた。そのときにMDPだけ1号増えてしまったのだ。
 Jリーグには立派なプログラムを発行しているクラブがいくつもある。だが「ナビスコの年」から25シーズン継続しているのは浦和だけだ。
 欧州のプロでは常識といっていいプログラム。Jリーグ時代になると、どのクラブも派手なものをつくり、無償配布するクラブもあった。しかし浦和は最初から「来場者に買ってもらう」方針をとり、安価に抑えた。
 「毎試合必ず発行することで、10年間、20年間積み重ねれば歴史になる」という哲学の下の発行だった。
 第1号は178部しか売れなかった。大赤字だった。クラブ財政が逼迫(ひっぱく)した時期には編集費の削減も余儀なくされた。だが不思議にどこからも「廃止論」は出なかった。
 「ファンがスタジアムで過ごすための必需品。チームやスタッフとサポーターが気持ちを通い合わせるツールでもあります。販売員たちにも、一人ひとりのファンに対しその気持ちを込めてお売りするよう話しています」
 そう語るのは、かつて広報担当でMDP制作も担当し、現在は浦和のマーチャンダイジング課長として販売を取り仕切る丸山大輔さんだ。
 浦和のMDPは当初埼玉新聞社が制作を請け負い、2005年以後はクラブの直接制作となった。だが1992年以来一貫して編集に当たっているのが清尾淳さんだ。2005年、清尾さんはごく自然に埼玉新聞を退職し、浦和と直接契約した。
 「選手や監督の生のコメントをサポーターに届ける。サポーターの生の声を選手に聞いてもらう。その思いでやってきました。実際、選手たちがスタジアムに到着してロッカールームにはいったとき、真っ先に手に取るのがMDPなんです。サポーターの声を読んで、『よしやるぞ!』と闘志をかきたてる選手もたくさんいます」(清尾さん)
 ファン、サポーターとチーム、選手をつないで25シーズン。積み重ねが歴史となり、500号の偉業となった。

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(2016年7月13日) 
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