サッカーの話をしよう
No.1125 IFABが示したサッカー浄化の3指針
「サッカーが30分ハーフになる?」
19日朝、こんなニュースが話題になった。「震源地」は国際サッカー評議会(IFAB)。国際サッカー連盟(FIFA)外に置かれたサッカールールの決定機関である。15日に発表した「プレー・フェア!」という名の活動指針に示された今後検討すべきルール改正案のひとつに、「ライン外にボールが出たり反則があってプレーが途切れるたびに時計を止め、通算の実質プレー時間が30分になるまでハーフを続ける」というものがあったのだ。
すぐに変わるというわけではない。仮に世界中が賛成しても、まず数年かけて新ルール案を「検討」し、その後数年間の「実験」を経て、正式ルールになるという手順だ。
そもそも今回の活動方針の発表は、ことし3月に行われたIFABの年次会議で現在のサッカーに横行するあからさまな時間稼ぎやアンフェアな行為を撲滅する方策を検討するなかから生まれた。「選手たちの行動を改善し、リスペクトを広める」「実質プレータイムを伸ばす」「公正さと喜びを増す」の3つの柱からなり、「ルール改正なしにいますぐ実行できること」「すぐに実験を始められること」、そして「検討を要すること」が列記されている。
「30分ハーフ」の検討も気になるが、より興味深いのは「いますぐ実行できること」に挙げられた3つの事項だ。現在ロシアで開催されているFIFAコンフェデレーションズカップから実施に移されることになっている。
その第1は、「キャプテンの責任をより重くする」ことだ。試合中に重大な出来事があったとき、主審と話すことができるのはキャプテンだけとする。それによってたくさんの選手が主審を取り囲むなどの混乱を減らすことができる。キャプテンは主審に協力して仲間を落ち着かせ、事態を収める責任ももつ。
第2は、追加タイムの厳格化だ。従来は「前半1分、後半3分」が「常識的」だったが、PKの判定からけられるまで、得点から次のキックオフまで、イエローなどのカードが出されてから再開までなど、無用に浪費された時間をしっかりと追加することを主審に求めている。そして第3が、GKがボールをつかんでから放さなければならない「6秒ルール」の厳格化だ。
活動指針の最終目的は、サッカーをよりフェアに、そしてより魅力あるものにすることにほかならない。目的実現のためなら大胆なルール改正も辞さないという姿勢を示したIFAB。指針だけでなく具体的な改正案まで公表したのは、開かれた議論が世界中で活発に行われることを期待してのものに違いない。
(2017年6月21日)
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