サッカーの話をしよう
No.1140 日本のGKの大きな技術的欠陥
現在のJリーグで寂しく感じるのは、日本人ゴールキーパー(GK)の人材不足だ。
J1でナンバーワンGKと言えば、磐田のポーランド人クシシュトフ・カミンスキー(26)だろう。2015年はじめに23歳で来日して3年目。磐田のJ1昇格と、その後の上位進出の大きな柱となっている。しっかりとした基本に基づくオーソドックスなゴールキーピングは、シュートを打つ相手チーム選手に無力感さえ感じさせるのではないか。
そして彼に続くのが、神戸の金承圭(キム・スンギュ=27)、C大阪の金鎮鉉(キム・ジンヒョン=30)、そして札幌の具聖潤(ク・ソンユン=23)の韓国勢だ。韓国代表は今週から来週にかけて欧州でロシアなどと対戦するが、その代表に選ばれたGKは、すべてJリーグで活躍するこの3人だ。なかでも金承圭はカミンスキーと甲乙つけ難い実力の持ち主だ。
さて日本人GKである。柏の中村航輔(22)は今後を大いに期待できる若手だ。おそらく来年のワールドカップ後は日本代表のレギュラーポジションをつかむだろう。しかしそのほかは、リズムが合うとスーパーセーブを見せるものの、その一方で信じ難いほどのもろさをもつ選手ばかり。
体格の問題ではない。カミンスキーも韓国代表の3人も190センチ前後の長身だが、日本人GKとの間には、それ以上に判断力や基本に忠実な技術の差を感じてしまうのだ。
前に出るのか、それともとどまるのか、前に出るならどこで止まるのか、その判断力が日本人GKは非常に劣る。出ようとして戻り、その瞬間にシュートを打たれて失点するといった形をよく見る。
だがそれ以上に重大な問題は技術面だ。Jリーグの日本人GKには、相手がシュートを打つ瞬間に両足が地面についていない選手が驚くほど多い。大きくジャンプする前に小さく跳ぶ「プレジャンプ」という動きを入れるからだ。ドイツのGKがこの動きをすることから日本でも指導されるようになったようだが、実際にはプレジャンプのために反応が遅れ、シュートを防ぎきれない場面がよくある。
カミンスキーは、相手がシュートを打つ瞬間には必ず両足が地面につき、しかも体重が均等にかかり、やや重心は低くするが、上体はリラックスしている。だからどんなシュートにも反応できる。さらに、両足がついているから、状況に応じて1歩か2歩横に動いてからジャンプでき、守備範囲が格段に広くなる。
フランスでプレーする日本代表GK川島永嗣(34)はカミンスキーと同じ技術を身につけている。柏の中村もそれに近いレベルにある。だがそれ以外の日本のGKは、残念だが国際レベルから遠く離れてしまっている。
(2017年10月4日)
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