サッカーの話をしよう
No.1150 Jリーグが握るなでしこジャパンの未来
なでしこジャパン(日本女子代表)がふんばっている。先週始まった東アジアE-1選手権。苦しみながらも韓国と中国に連勝し、今週金曜日には、連勝同士、優勝をかけて北朝鮮と対戦する。
東アジアは女子サッカーの激戦地だ。来年4月に2019年女子ワールドカップのアジア最終予選が開催されるが、不参加の北朝鮮を除く3チームがそろって出場権を獲得する可能性は十分ある。
FIFA(国際サッカー連盟)ランキング日本8位、北朝鮮10位、中国13位、韓国も15位。東アジアは、アジアだけでなく世界でも有数の女子サッカー激戦地と言える。FIFAは女子サッカーがますます盛んになることを見越して代表チームの「世界リーグ」を検討中だというが、実現すれば東アジア勢がその一角を占めるのは間違いない。
だが世界の女子サッカー勢力図は10年ほどの間に急速に塗り替えられている。なかでも成長著しいのが欧州勢だ。
かつて欧州ではノルウェーなど北欧勢が強かったが、現在のFIFAランキング上位には、過去10年間に圧倒的な強さを見せてきたドイツ(2位)だけでなく、イングランド、フランス、オランダと、最近10位以内にはいった「急成長組」の名がずらりと並んでいる。ことし8月に開催された女子欧州選手権では、ドイツが準々決勝で敗退、オランダが初優勝を飾った。
これら欧州の「急成長組」に共通するのは、この10年ほどの間に男子プロトップリーグのクラブに女子チームの保有を義務付けたことだ。それにより練習や試合環境が飛躍的に向上し、急速なレベルアップを生んだ。女子の国際試合が興業として成り立つようになり、登録女子選手数は年に7%も伸びているという。
こうしたなかで、東アジア勢は次第にFIFAランキングを落としている。日本サッカー協会は女子の代表強化に大きな力を注いでいるが、頂点(なでしこジャパン)をより高くしようとするなら、トップリーグのレベルを上げなければならない。その切り札は、間違いなくJリーグだ。
現在もいくつかのJリーグクラブが女子チームを保有しており、J2の東京ヴェルディは下部組織で育てたたくさんの選手をなでしこジャパンに送り込んでいる。しかしJリーグは女子チームの保有を義務付けておらず、クラブ間の温度差は極めて大きい。
高倉麻子監督率いる現在のなでしこジャパンは、若手を大胆に起用しながらこれから数年間のうちに大きく伸びる可能性を秘めている。だが10年後、20年後の話になると、男子と同様、欧州勢に大きく引き離される恐れが大きい。Jリーグが大きな決断をなすべき時期にきている。
(2017年12月13日)
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