サッカーの話をしよう
No.1156 ネーションズリーグで二極化進む?
新しい時代が始まるのだろうか―。
先週、スイスのローザンヌで開かれた抽選会で、欧州サッカー連盟(UEFA)が今秋から開催する「欧州ネーションズリーグ」の組分けが決まった。4年にいちどの「欧州選手権」に加え、2年にいちどチャンピオンが決まる新大会をスタートさせるのだ。
代表チームのサッカーは過渡期にきている。ワールドカップ、欧州選手権、そしてそれらの予選など公式戦は注目されるが、親善試合になると観客は集まらず、選手たちのモチベーションも極端に低下する。そこで考え出されたのがこの大会だった。
UEFA加盟の55カ国を4つの等級(リーグA~D)に分け、さらに各等級を3あるいは4チームずつ4組、計16組に分ける。ことし9月、10月、11月の国際試合日を利用して各月2節を消化、各組内でホームアンドアウェーの戦いをし、順位を決める。
優勝を争うのはリーグA各組1位の4チームだけ(来年6月に準決勝と決勝を行う)だが、全16組の1位は来年3月にスタートする欧州選手権予選プレーオフへの出場権を得る。10組に分けての欧州選手権予選。各組上位2チーム、計20チームが2020年6月の決勝大会への出場権を得るが、そこで3位以下になってもネーションズリーグで1位を確保していれば、最後の4枠への戦いに参加できるのだ。
ネーションズリーグの新鮮さは「等級分け」にある。UEFA独自のランキングで最も低い「リーグD」の16チームは、ワールドカップや欧州選手権の予選では常に上位のチームと当たり、ほとんど勝てない。だが新大会では勝てる可能性のある相手ばかり。しかも欧州選手権のプレーオフは、ランクの上位同士、下位同士で当たるため、リーグDの16チームからも必ず1チームは欧州選手権の決勝大会に出場できる。下位ランクの国のサッカーに大きな刺激を与えるのは間違いない。
だが懸念はある。欧州のサッカーはこれでますます内向的になってしまうのではないか。現在のUEFAは国際サッカー連盟(FIFA)をしのぐ資金力をもち、クラブも代表チームのサッカーも、欧州内の戦いで十分世界の耳目を集める実力と魅力を備え、自己充足できるからだ。
もちろん親善試合がゼロになるわけではない。だが欧州外の国が欧州のチームと交流する機会は大きく減る。
世界中からかき集めるテレビ放映権収入で隆盛を極める欧州のサッカー。だがその収益は域内のサッカー振興だけのために使われ、さらに新大会が力を与える。新しい時代とは、世界のサッカーが「欧州とそれ以外」に二分され、格差が広がる一方の時代だ。
(2018年1月31日)
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