サッカーの話をしよう
No.1157 寒いスタジアムに決別を
「春は名のみの...」を地で行くような寒さだ。
記録的な寒波だという。日本海側や東北地方、そして北海道は厚い雪に覆われ、太平洋岸でも連日氷点下に近い冷え込みが続いている。
そうしたなか、Jリーグの開幕が近づいている。今週土曜日にはシーズンの開幕を告げる「スーパーカップ」(川崎×C大阪)が埼玉スタジアムで行われ、23日(金)から25日にかけてJ1とJ2がいっせいに開幕する。J3の開幕は3月9、10の両日だ。
1月30日には柏でアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)のプレーオフがあった。火曜日だからキックオフは午後7時。トレーニング開始から3週間たらずで試合に臨んだチームも大変だったが、1月のナイター観戦は、観客にとってもあまり歓迎したくないことだったに違いない。
昨年、Jリーグは従来のシーズン制を継続することを決めた。8月開幕、翌年5月閉幕という「秋春制」に変更するか長年検討してきたが、変更によるたくさんのメリットを理解しつつも、冬の公式戦が増えることに対する恐れを拭い切れなかったのだ。積雪による試合中止のリスクもある。何よりも、寒いなかではファンに来てもらえないという思いがある。
だがシーズン制が現在のままでも、寒さに凍えながらの観戦になる時期は短くない。2月、3月、11月、12月はもちろん、ナイターなら4月でも相当冷え込む。友人に笑われながらも、私は4月までは取材バッグのなかにダウンのインナーと手袋を入れておくのだが、かなりの頻度で出番が訪れる。
仕事なら寒さも我慢しなければならない。だが安くない入場料を払うファンに我慢させていていいのか。ファンが来なければプロスポーツは成り立たない。現在のままのシーズン制でも寒さに凍えているファンがいるなら、リーグやクラブは、「寒くないスタジアム」の実現に向け動き始めなければならない。
どんな天候でも快適に観戦できるのは、「ドーム型スタジアムに冷暖房」だろう。だが短期間での実現は難しい。まずは全観客席に屋根をかけること、風が吹き抜けないように観客席の背後をふさぐこと。そしてそのうえに、地域の気候やスタジアムに合わせた効果的な暖房システムを構築する。風力をはじめとした再生可能エネルギーだけでなく、近隣工場の排熱利用など工夫の可能性は無限にある。
今週冬期五輪が開幕する韓国の平昌(ピョンチャン)はマイナス20度にもなると言う。それほどでなくても、2月、3月の日本のサッカースタジアムで2時間じっと座っているのは十分つらい。この問題を放っておくことは許されない。
(2018年2月7日)
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