サッカーの話をしよう

No.1171 to be, or not to be

 「32か48か、それが問題だ...」というところだろうか。
 来週水曜日、ワールドカップ開幕の前日に、国際サッカー連盟(FIFA)がモスクワで第68回総会を開く。
 最大の関心はワールドカップ2026年大会のホスト国決定だ。アメリカを中心とした北米3カ国の共同開催か、モロッコの単独開催かが、およそ半世紀ぶりに総会投票で決められる。
 だが私は、それに先だって審議される事項のほうが気になっている。南米サッカー連盟の提案による2022年大会の「拡大案」だ。ことし4月に急に話が持ち上がり、総会の審議事項となった。
 昨年、FIFAは2026年大会からワールドカップ出場チーム数を従来の32から48にすることを決めた。総試合数が64から80へと増え、大幅な収益増につながるという計算だった。北米3カ国の共同開催案が有力視されているのは、都市数の少ないモロッコでは80試合開催は難しいからだ。
 南米の提案は、それを「8年後」ではなく「4年後」に前倒ししようというもの。2022年大会は中東のカタールで11月から12月にかけて開催されるが、カタールは実質的に首都ドーハ1都市の国。すでに招致活動時の計画を3分の2に縮小し、8スタジアムでしか建設計画が進んでいない。当然、「80試合はとても無理」と難色を示している。
 かといって、近隣のUAEやサウジアラビアとの共同開催も難しい。現在、カタールは政治的にアラビア半島で孤立状態にあるからだ。
 もちろん、48チーム制なら予選は非常に楽になる。2026年大会のアジア枠は8。現在の4.5枠と比較すると大幅にチャンスが広がる。だが2022年への前倒しどころか、2026年以後も現行の32チーム制のままにするべきだと私は思う。
 1930年に第1回大会が開催されたワールドカップ。48年後の1978年大会までは16チームの大会だった。この大会で初めてエントリーが100カ国を超え、続く1982年大会は24チームに拡大された。4チームずつ6組。1982年大会には12チーム(3チーム×4組)の2次リーグが行われたが、1986年大会以降はノックアウトステージに3位まで進むことができ、グループリーグの緊張感が大幅に落ちた。それが1998年大会から32チームになったことで、すっきりとした形となった。ことしのロシア大会のエントリーは209カ国。32チームはけっしてアンバランスではない。
 48チーム制では3チームずつ16組となる。3チームのリーグ戦には、日程上大きな不公平がある。そしてあまりの試合の多さに、世界の関心を集めるのはごく一部の試合だけになるだろう。ワールドカップの魅力は大きく減殺されてしまう。48チーム制は、収益増に目がくらんだFIFAのまさに「自殺行為(not to be)」だ。

(2018年6月6日) 
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