サッカーの話をしよう
No.1179 多忙な週末
日本のサッカーにとって多忙な週末だった。日本時間に直しての時系列で振り返ってみよう。
8月24日金曜日の午後9時30分にキックオフされたのがアジア大会の男子決勝トーナメント1回戦だ。会場はジャカルタの東、ブカシ市のパトリオットスタジアム。A代表監督も兼ねる森保一監督率いる?歳以下(U−21)日本代表がマレーシアと対戦した。
ほとんど練習もできないまま寄せ集めに近い状態で大会にはいって4試合目。マレーシアの堅守速攻スタイルに手を焼いたが、終了間際にFW上田綺世(法政大)がPKで決勝点を挙げた(この一戦でチームが完全にまとまり、27日の準々決勝ではサウジアラビアに2−1で快勝した)。
その試合終了から約3時間後の25日土曜日午前2時半には、フランス東部ブルターニュ地方のバンヌで池田太監督率いる20歳以下(U−20)日本女子代表がこの年代の女子ワールドカップで初の決勝戦に臨んだ。相手は1次リーグでも対戦し、0−1の敗戦を喫しているスペインだ。
他の欧米チームと比較すると長身選手は少ないが、技術が高く、身体能力では日本を大きく上回るスペイン。しかしアメリカ、ドイツ、イングランドという優勝候補を次々と倒して決勝まで進んだ「ヤングなでしこ」は落ち着いていた。序盤の相手の猛攻を受け流すと、前半38分にMF宮澤ひなた(日テレ)の見事なミドルシートで先制、後半にも12分FW宝田沙織(C大阪)、20分MF長野風花(仁川)とたたみかけ、3−1で圧勝して初優勝を飾ったのだ。
これで日本の女子は、なでしこジャパン(11年)、U−17(14年)と合わせ、女子の全クラスの世界大会で優勝を飾った最初の国となった。
そして日本時間で25日の午後6時には、高倉麻子監督率いるなでしこジャパンがアジア大会の準々決勝で北朝鮮と対戦した。昨年の12月に0−2で完敗した相手だ。会場はスマトラ島のパレンバン。
「妹分」の優勝に刺激されたのか、この試合のなでしこジャパンは闘志満々だった。前半40分にFW岩渕真奈(INAC神戸)のゴールで先制すると、後半17分にはMF長谷川唯(日テレ)が追加点。北朝鮮の反撃を1点に抑え、2−1で勝ちきったのだ。
この3チームには、確実にパスをつないで攻め、苦しい時間帯をチーム一丸で乗り切るという「日本スタイル」が見事なまでに貫かれていた。それは当然、9月7日のチリ戦(札幌)でスタートを切る男子の日本代表で、さらに明確に示されることだろう。
今週には最初のメンバー発表が予定される「森保ジャパン」。弟分や妹分の奮闘に負けているわけにはいかない。
(2018年8月29日)
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