サッカーの話をしよう
No.1195 どうなる、コパ・アメリカ
コパ・アメリカ(南米選手権)はどうなるのだろうか。
12月11日、日本サッカー協会は来年の日本代表のスケジュールを発表、A代表の活動のなかに6月14日から7月7日までブラジルで行われるコパ・アメリカを入れた。森保一監督は、「南米には学ばなくてはいけないことがまだまだある」と期待を語った。
ところがその3日後にJリーグが来年の基本的な日程を発表すると、なんとコパ・アメリカの大会期間中に第15節からの4節が組み込まれている。6月中旬から下旬にかけては、川崎、広島、鹿島、浦和が出場するアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)のラウンド?も組まれている。
南米サッカー連盟の選手権であるコパ・アメリカだが、南米連盟はわずか10しか加盟国がないため、1993年大会以来、地域外から2カ国を招待し、12カ国で開催してきた。1999年には南北のアメリカ大陸以外から初めて日本代表が参加。日本は2011年にも出場が決まっていたが、東日本大震災の影響で辞退を余儀なくされた。
昨年5月、南米連盟がことしの大会に日本を招待することを発表。しかし大陸別の選手権に選手を招集できるのは年にいちどだけという国際サッカー連盟(FIFA)の規定があり、1月のアジアカップに出場した選手を強制的に呼ぶことはできない。Jリーグの協力は不可欠だった。
1999年にコパ・アメリカに出場したときにはJリーグの日程を2カ月間以上空けた。この当時、国外のクラブに所属する日本代表は中田英寿ただひとりで、チーム編成上の問題はなかった。2011年もJリーグは7月に約1カ月間日程を空け、日本協会は「国内組」だけで出場する計画だった。しかし震災によりJリーグは1カ月半も中断。その日程を7月に入れざるをえず、辞退という苦汁の決断となった。
ところが今回は最初からJリーグの日程とバッティングしている。「海外組」も「Jリーグ組」もなしに日本代表を組むのは不可能だ。
そもそも、世界のどこでも代表チームを運営するサッカー協会とプロリーグは日程を巡って利害が衝突するのが普通の形と言える。しかし日本はこれまで協会とJリーグが非常に良い協力関係を築いてきた。互いに相手の立場を理解し、妥協し合うことでリーグも代表もなんとかやってきた。日本代表とJリーグは、日本のサッカーに不可欠な2つの「動輪」だからだ。
来年のコパ・アメリカを巡って、その「協力関係」はどこに行ってしまったのか--。どちらが正しい、正しくないという問題ではない。2つしかない「動輪」が別の方向を向いてしまったら、日本のサッカーは迷走するばかりだ。
(2018年12月19日)
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