皆さんこんにちは。前回、ベースボールマガジンに突然押し掛けるという驚きの強硬策で、内定を取りつけてしまった経緯を語ってもらいました。今回はサッカーマガジンでのアルバイト生活と、入社にいたるまでの紆余曲折の日々を語ってもらいました。
サッカーマガジン編集部でのアルバイト生活
兼正(以下K)
いよいよおじさんの編集者人生のスタートですね。
良之(以下Y)
そうだと思うでしょ?ところが、編集部が5人体制で人手が足りないから、大学卒業するまでアルバイトをしてほしい、って言われたんだ。サッカーマガジンで働けるのは嬉しかったけど、今までやってきたサッカースクールの仕事ももちろん面白い。だから本音はサッカーマガジンでアルバイトなんてしたくなかった(笑)。
K
もしかして断ったの?
Y
いやいや(笑)。ちゃんとサッカースクールには事情を説明したよ。自分の仕事は他の人に割り振ったりとかしてね。それでサッカーマガジンに行き始めた。大学4年の4月からね。
K
なるほど。でも、それなら大学を卒業してすぐ入社しても、即戦力になりますね。
Y
おそらく、会社側もそういった目論見が少なからずあったんじゃないかな。そういえば、同じ年の9月に俺と一緒に仕事をしていたアルバイトが辞めたんだ。人手が元々少なかったから当然誰かいないかってことになって。その頃、サッカースクールでコーチをやっていた千野(圭一/元サッカーマガジン編集長)ってやつがいたんだけど、先輩に連れられて僕のところに来て「大住さん、サッカーマガジンに入るんですって?」って目を輝かせながら言うわけ。いや、あれは尊敬の眼差しだったかな(笑)。だから声をかけたんだよ。ちょうど人探しているから、よかったら一緒にやらないかって。
K
そういった経緯があったんですか!
Y
それでね、その頃のアルバイトの仕事って、今みたいにFAXもない、メールもないって環境だから、後輩が出来たことをいいことに千野に原稿取りとか面倒な仕事押し付けちゃってた(笑)。
K
千野さんかわいそう(笑)
Y
後になって千野から「大住さんは下積みを知らないから駄目だ」ってよく言われたよ(笑)。
オイルショックがもたらした、内定取り消しの危機
K
アルバイト時代は特に問題なく過ごされたんでしょうか。
Y
それが、夏頃にオイルショックがあって、紙が一斉値上げになる事態が起こったんだよ。僕はもちろんオイルショックが起きていることは知っていたけど、だからって特別何か自分に害が必要以上に降りかかるわけじゃなかったから、いつものように編集部でアルバイト業務に精を出していたんだ。それで、廊下を歩いていたときに、たまたますれ違った社員の人に「もう就職決まったの?」って聞かれたわけ。僕は当然「来年からこちらでお世話になることになりました」って答えたら、その答えに返ってきた言葉にびっくり。「オイルショックの影響で来年の新卒採用はないよ」って。
K
えっ!? どうしたんですか?
Y
そのことを慌てて編集部の人に言ったら、上に掛け合いに行ってくれて。内定取り消しは回避できたんだよ。でも、世の中がそんな状況だったから、翌年の新入社員は縁故採用4名、その他1名――僕のことだけど――だったってわけ。
K
とても大変な時代だったんですね。
Y
ほんとに世の中がガラッと変わったからね......。というわけでサッカーマガジンに入るまでの話が長くなっちゃったけど(笑)。こんな感じかな。
K
でも勇気ありますよね。そもそも入りたい会社に押し掛けるとか考えつかなかったです。
Y
めちゃくちゃでしょ(笑)。時代がそれを許してくれたのかもしれないし、マスコミ業界について何の知識もないことが結果的にプラスに働いたのかもしれないな。
K
今の時代じゃ考えられないですよ。
Y
そうかもしれないね。僕から見ればスーツに身を固めて就職活動をする若者に驚いちゃうな。
K
おじさんの他にサッカーマガジンに就職を希望する人っていなかったんですか?
Y
もうひとりひとり入社を希望する人がいたんだよ。しかも同じ大学。結果的に彼はフジテレビに行ったんだけれど。二人だけだったとはいえ、自分を選んでもらった時は正直うれしかったよ。
K
選んだ決め手とか後になって聞かれましたか?
Y
やっぱり人柄じゃないかな(笑)。なんて冗談はさておき、オイルショックのせいでとんだドタバタ劇になってしまったけど、無事入社出来たんだ。
→(続きは次回)