「サッカーのあれが嫌いなんだよ」
以前、ラグビーファンからこう指摘された。
「あれ」とは、タッチラインを出たボールが相手チームのスローインだとわかったときに、すぐには渡さず、しばらく下がってからポーンと高く投げてしまう行為のことだ。
自分が守備のポジションにつく前に相手チームがスローインをしてしまったら不利になる。だから時間をかせぐためにこんなことをする。サッカーという競技ではなかば「常識」、見慣れたファンにとっては何でもない行為だ。
だが別の競技をしている人の目には、これが信じがたい行為と映った。スポーツの風上にも置けない卑劣な行為に見えたのだ。
「スポーツにはそれぞれお家柄がある」
長い間、日本サッカーの「ご意見番」役を務めてきたジャーナリスト牛木素吉郎氏(元読売新聞)は、いたずらにスポーツ同士を比べる危険性をこう説いた。
各競技には、それぞれの歴史的・文化的な背景があり、それぞれ習慣や哲学が違う。ある競技で反則とされることが、別の競技では高度な駆け引きと見られる場合もある。
私にしても、ともすれば「サッカーの常識」を物差しにして他の競技を見てしまう。だがその競技のバックグラウンドをしっかりと知らないと、とんだ見当違いをしてしまう。
しかし冒頭のラグビーファンの言葉は、「お家柄」を超えた話だった。「赤信号、みんなで渡れば怖くない」的な感覚の麻痺を、指摘された思いだった。
先日、あるスキー団体の人びとと話をする機会があった。Jリーグが進めている「ホームタウン構想」を説明してほしいと、地域や職場のスキークラブの代表者たちから求められ、理解している範囲で話した。
Jリーグの理想形はドイツなどに見られる地域に密着した総合スポーツクラブであること。プロとして成り立つサッカーを中心に、地域の人びとがいろいろなスポーツを手軽に楽める環境をつくろうとしていること。現状ではまだサッカーで手いっぱいだが、川淵チェアマンのリードで「総合スポーツクラブ化」への動きが始まっていること。
すると、大阪でスキークラブを運営している人からこんな話が出た。
「Jリーグをテレビで見ていると、必ず相手の体やシャツを引っ張るシーンに出くわす。とてもスポーツとは思えないアンフェアーな行為を平気でしている。そんなことをしているJリーグが、地域のスポーツ全般を振興するなどと言っても、まったく喜べない。逆に、余計なお世話だと言いたい」
これまで、日本ではサッカーはマイナーな存在だった。少年たちの間でいくら盛んになってもマスコミでの取り上げは小さく、一般の人びとの話題にはならなかった。そのせいか、「外部」の人びとがサッカーをどう見るかなど、あまり気にしていなかった。
「町のスキーヤー」や冒頭のラグビーファンの指摘に、「世界のどこでもやっていること。サッカーでは常識の範囲。別に反則ではない」と居直ることは簡単だ。だが素直に心を開いてみれば、彼らの感覚のほうが正しいことは明らかだ。
Jリーグは、「ホームタウン構想」を通じて地域社会への責任を果たそうとしている。それは大事なことだ。だが同時に、大きな注目を集める存在として、競技をよりフェアなものにすることによって、スポーツ全体への責任も果たさなければならないと私は思う。Jリーグは、クラブは、そして選手たちはどう考えるだろうか。
(1996年9月30日)
以前、ラグビーファンからこう指摘された。
「あれ」とは、タッチラインを出たボールが相手チームのスローインだとわかったときに、すぐには渡さず、しばらく下がってからポーンと高く投げてしまう行為のことだ。
自分が守備のポジションにつく前に相手チームがスローインをしてしまったら不利になる。だから時間をかせぐためにこんなことをする。サッカーという競技ではなかば「常識」、見慣れたファンにとっては何でもない行為だ。
だが別の競技をしている人の目には、これが信じがたい行為と映った。スポーツの風上にも置けない卑劣な行為に見えたのだ。
「スポーツにはそれぞれお家柄がある」
長い間、日本サッカーの「ご意見番」役を務めてきたジャーナリスト牛木素吉郎氏(元読売新聞)は、いたずらにスポーツ同士を比べる危険性をこう説いた。
各競技には、それぞれの歴史的・文化的な背景があり、それぞれ習慣や哲学が違う。ある競技で反則とされることが、別の競技では高度な駆け引きと見られる場合もある。
私にしても、ともすれば「サッカーの常識」を物差しにして他の競技を見てしまう。だがその競技のバックグラウンドをしっかりと知らないと、とんだ見当違いをしてしまう。
しかし冒頭のラグビーファンの言葉は、「お家柄」を超えた話だった。「赤信号、みんなで渡れば怖くない」的な感覚の麻痺を、指摘された思いだった。
先日、あるスキー団体の人びとと話をする機会があった。Jリーグが進めている「ホームタウン構想」を説明してほしいと、地域や職場のスキークラブの代表者たちから求められ、理解している範囲で話した。
Jリーグの理想形はドイツなどに見られる地域に密着した総合スポーツクラブであること。プロとして成り立つサッカーを中心に、地域の人びとがいろいろなスポーツを手軽に楽める環境をつくろうとしていること。現状ではまだサッカーで手いっぱいだが、川淵チェアマンのリードで「総合スポーツクラブ化」への動きが始まっていること。
すると、大阪でスキークラブを運営している人からこんな話が出た。
「Jリーグをテレビで見ていると、必ず相手の体やシャツを引っ張るシーンに出くわす。とてもスポーツとは思えないアンフェアーな行為を平気でしている。そんなことをしているJリーグが、地域のスポーツ全般を振興するなどと言っても、まったく喜べない。逆に、余計なお世話だと言いたい」
これまで、日本ではサッカーはマイナーな存在だった。少年たちの間でいくら盛んになってもマスコミでの取り上げは小さく、一般の人びとの話題にはならなかった。そのせいか、「外部」の人びとがサッカーをどう見るかなど、あまり気にしていなかった。
「町のスキーヤー」や冒頭のラグビーファンの指摘に、「世界のどこでもやっていること。サッカーでは常識の範囲。別に反則ではない」と居直ることは簡単だ。だが素直に心を開いてみれば、彼らの感覚のほうが正しいことは明らかだ。
Jリーグは、「ホームタウン構想」を通じて地域社会への責任を果たそうとしている。それは大事なことだ。だが同時に、大きな注目を集める存在として、競技をよりフェアなものにすることによって、スポーツ全体への責任も果たさなければならないと私は思う。Jリーグは、クラブは、そして選手たちはどう考えるだろうか。
(1996年9月30日)
Jリーグの後期がスタートし、優勝の行方など見当もつかない時期に、早くも来年のリーグ戦方式が話題に上り始めている。
先月末に報道された試案では、最多で2クラブが昇格し、18クラブ制になる予定の来季は、今季と同様に年間で2回総当たり(1クラブあたり34試合)とする。そして前・後期でそれぞれ優勝を決め、年間王者をかけて「チャンピオンシップ」を開催する。
この試案に対し、Jリーグの「業務運営委員会」では「試合が少なすぎる」などの反対意見が出ているという。理由は、主としてクラブ経営の立場、すなわち入場料収入確保だ。
だがより大きな問題は、18クラブ制がファンの興味を引きつけられるかということではないか。
今季昇格の京都サンガは18節終了時点で全敗、勝ち点は0のままだ。何よりも日本人選手が力不足だ。シーズン途中にラモス瑠偉(ヴェルディ川崎)、山口敏弘(ガンバ大阪)という実力派を獲得したが、監督交代もあり、まだ「結果」にはつながっていない。
当初から「急激にクラブ数を増やすと、リーグのレベル低下を招く」という意見があった。昨季までの昇格クラブはそれぞれがんばったが、「16クラブ目」のサンガが、この懸念を実証してしまった。今後昇格するクラブが二の舞にならないとは言い切れない。
「チームレベル格差の拡大」は、観客動員に直接影響する。戦う前から結果が明白な試合がいくつもあったら、リーグの興味は急激に失せてしまう。
では、やはり「18クラブ」は無理なのか。私はそうは思わない。だが、そのためには「リーグの構造改革」が必要だ。
ひとつのクラブの「トップチーム枠」が20人、そのうち平均4人が外国人選手とすると、日本人は16人、18クラブでも288人いれば足りることになる。ところが今季のはじめには、一クラブ平均30人、16クラブ総計では480人余りの日本人選手が登録されていた。
多くの選手をかかえているのは、各クラブの直接的指導の下、「サテライトリーグ」で次代の選手を育成しようという考えだ。日本サッカー協会が規定している「移籍規定」がネックとなり、クラブ自体にも移籍が積極的にとらえられていないこともあって、自前で選手をまかなわなければならない状況だからだ。
Jリーグはサテライトリーグのあり方を再考し、少なくともアマチュアだけのリーグにするべきだ。それは、日本協会の移籍規定改正に基づく移籍の活性化とセットにならなければならない。各クラブのプロ選手数を減らすことが、現在のJリーグが直面する問題の解決の決め手となる。
これによって、昇格するクラブはいい選手をそろえることができ、シーズン中に負傷などで選手が足りなくなっても移籍で補うことが可能になる。18クラブでも十分トッププロらしいレベルを保持できる。
カズや前園といったトップクラスの移籍が実現すれば、毎年各クラブはフレッシュで魅力的な布陣でシーズンインができる。それはシーズンチケットの売り上げを促進する一方、クラブ間の力のバランスを絶えず変えて、より興味深いリーグにするはずだ。
選手数が多いから、試合数を増やさなければならない。試合数が多いから、ケガも多く、選手数を増やさなければならない。悪循環に陥っているJリーグを救うのは、移籍の活発化を伴う「リーグ構造改革」以外にない。日程のやり繰りではもうどうしようもないところにきているのだ。
(1996年9月9日)
先月末に報道された試案では、最多で2クラブが昇格し、18クラブ制になる予定の来季は、今季と同様に年間で2回総当たり(1クラブあたり34試合)とする。そして前・後期でそれぞれ優勝を決め、年間王者をかけて「チャンピオンシップ」を開催する。
この試案に対し、Jリーグの「業務運営委員会」では「試合が少なすぎる」などの反対意見が出ているという。理由は、主としてクラブ経営の立場、すなわち入場料収入確保だ。
だがより大きな問題は、18クラブ制がファンの興味を引きつけられるかということではないか。
今季昇格の京都サンガは18節終了時点で全敗、勝ち点は0のままだ。何よりも日本人選手が力不足だ。シーズン途中にラモス瑠偉(ヴェルディ川崎)、山口敏弘(ガンバ大阪)という実力派を獲得したが、監督交代もあり、まだ「結果」にはつながっていない。
当初から「急激にクラブ数を増やすと、リーグのレベル低下を招く」という意見があった。昨季までの昇格クラブはそれぞれがんばったが、「16クラブ目」のサンガが、この懸念を実証してしまった。今後昇格するクラブが二の舞にならないとは言い切れない。
「チームレベル格差の拡大」は、観客動員に直接影響する。戦う前から結果が明白な試合がいくつもあったら、リーグの興味は急激に失せてしまう。
では、やはり「18クラブ」は無理なのか。私はそうは思わない。だが、そのためには「リーグの構造改革」が必要だ。
ひとつのクラブの「トップチーム枠」が20人、そのうち平均4人が外国人選手とすると、日本人は16人、18クラブでも288人いれば足りることになる。ところが今季のはじめには、一クラブ平均30人、16クラブ総計では480人余りの日本人選手が登録されていた。
多くの選手をかかえているのは、各クラブの直接的指導の下、「サテライトリーグ」で次代の選手を育成しようという考えだ。日本サッカー協会が規定している「移籍規定」がネックとなり、クラブ自体にも移籍が積極的にとらえられていないこともあって、自前で選手をまかなわなければならない状況だからだ。
Jリーグはサテライトリーグのあり方を再考し、少なくともアマチュアだけのリーグにするべきだ。それは、日本協会の移籍規定改正に基づく移籍の活性化とセットにならなければならない。各クラブのプロ選手数を減らすことが、現在のJリーグが直面する問題の解決の決め手となる。
これによって、昇格するクラブはいい選手をそろえることができ、シーズン中に負傷などで選手が足りなくなっても移籍で補うことが可能になる。18クラブでも十分トッププロらしいレベルを保持できる。
カズや前園といったトップクラスの移籍が実現すれば、毎年各クラブはフレッシュで魅力的な布陣でシーズンインができる。それはシーズンチケットの売り上げを促進する一方、クラブ間の力のバランスを絶えず変えて、より興味深いリーグにするはずだ。
選手数が多いから、試合数を増やさなければならない。試合数が多いから、ケガも多く、選手数を増やさなければならない。悪循環に陥っているJリーグを救うのは、移籍の活発化を伴う「リーグ構造改革」以外にない。日程のやり繰りではもうどうしようもないところにきているのだ。
(1996年9月9日)
強くなった。日本代表チームである。
8月25日、大阪にウルグアイ代表を迎えた試合は5−3の勝利。4−1とリードした後、主力を交代させたため2連続失点したが、最後はダメ押しの5点目を決め、堂々たる勝利だった。
「加茂日本」はことし7試合を戦い、5勝1分け1敗。総得点20、総失点11。勝った相手にポーランド、ユーゴスラビア、メキシコ、ウルグアイという世界の強豪ナショナルチームが並んでいるのは驚くばかり。ほんの5年ほど前には、対戦してもらうことさえ大変な相手だったのだ。
ウルグアイ戦では、1年ほどオリンピック代表に専念していた前園真聖(横浜フリューゲルス)が復帰、攻撃が一気に多彩になって見事な突破が次々と繰り出された。
日本代表はこの後、9月11日にウズベキスタン戦(東京)、10月13日にチュニジア戦(神戸)をこなし、12月のアジアカップ(アラブ首長国連邦)に臨む。92年秋に広島で行われた前回大会で日本が「アジア初制覇」を唱えた記念すべき大会。「タイトル防衛」の戦いだ。
他国の状況は不明な点も多いが、単純に戦力だけの話ならば、日本は文句なく優勝候補の筆頭に挙げられるはずだ。「連覇」の可能性は十分といえる。
だが、ことしにはいってからの日本代表のあまりの強さは、逆にひとつの不安を覚えさせる。それは、日本代表が伸びていく過程で避けて通ることのできない「壁」の存在だ。
これまで、「加茂日本」が戦った相手の大半は強豪で、強気に攻めのサッカーをしてきた。攻めてくる相手を前でつかまえ、奪ったボールを素早く攻撃につなげようというのが現在の日本代表の基本的なプレースタイル。相手が「強豪」であったことで、その戦術は見事にはまった。ことしの「快進撃」には、そうした背景があった。
だが、相手が日本を「格上」ととらえると、状況は大きく変わる。今後アジアのチームとの対戦では、多くの相手が日本に対して守りを固めるサッカーになるだろう。自陣に引いて厚い守備組織を敷き、速攻を狙ってくるだろう。日本のオリンピック代表がブラジルと対戦したときの戦法。相手の強さを認め、なんとかひと泡吹かせてやろうという狙いだ。
順調に力を伸ばし、世界の強豪に伍して戦うことができるようになった「加茂日本」。だが、少し力の落ちるチームがこのように割り切って守備を固めてくるゲームの経験はない。
加茂監督は、就任当初から「アジアの予選を勝ち抜くには、守りを固めてくる相手を攻め崩せるようにならなければならない」と語っていた。そのために、中盤の守備組織を強化し、そこから相手が帰陣する前に攻め込むチーム戦術を徹底してきた。
だが実際に守備を固める相手に対したときにその戦術がどこまで機能するか、それは未知数だ。
9月11日に東京の国立競技場で対戦するウズベキスタンは、固い守備とカウンターアタックで94年広島アジア大会を制覇したチーム。日本にとってはまず最初の「壁」となる。この相手にどういうふうに攻撃を組み立て、守備組織を崩すことができるか、そして相手のカウンターアタックをうまく処理できるか。
地味な相手ではあるが、アジア予選を突破してフランス・ワールドカップ出場を最大のターゲットとする日本代表にとってはこれまでの強豪との対戦よりずっと重要な意味をもった試合なのだ。
(1996年9月2日)
8月25日、大阪にウルグアイ代表を迎えた試合は5−3の勝利。4−1とリードした後、主力を交代させたため2連続失点したが、最後はダメ押しの5点目を決め、堂々たる勝利だった。
「加茂日本」はことし7試合を戦い、5勝1分け1敗。総得点20、総失点11。勝った相手にポーランド、ユーゴスラビア、メキシコ、ウルグアイという世界の強豪ナショナルチームが並んでいるのは驚くばかり。ほんの5年ほど前には、対戦してもらうことさえ大変な相手だったのだ。
ウルグアイ戦では、1年ほどオリンピック代表に専念していた前園真聖(横浜フリューゲルス)が復帰、攻撃が一気に多彩になって見事な突破が次々と繰り出された。
日本代表はこの後、9月11日にウズベキスタン戦(東京)、10月13日にチュニジア戦(神戸)をこなし、12月のアジアカップ(アラブ首長国連邦)に臨む。92年秋に広島で行われた前回大会で日本が「アジア初制覇」を唱えた記念すべき大会。「タイトル防衛」の戦いだ。
他国の状況は不明な点も多いが、単純に戦力だけの話ならば、日本は文句なく優勝候補の筆頭に挙げられるはずだ。「連覇」の可能性は十分といえる。
だが、ことしにはいってからの日本代表のあまりの強さは、逆にひとつの不安を覚えさせる。それは、日本代表が伸びていく過程で避けて通ることのできない「壁」の存在だ。
これまで、「加茂日本」が戦った相手の大半は強豪で、強気に攻めのサッカーをしてきた。攻めてくる相手を前でつかまえ、奪ったボールを素早く攻撃につなげようというのが現在の日本代表の基本的なプレースタイル。相手が「強豪」であったことで、その戦術は見事にはまった。ことしの「快進撃」には、そうした背景があった。
だが、相手が日本を「格上」ととらえると、状況は大きく変わる。今後アジアのチームとの対戦では、多くの相手が日本に対して守りを固めるサッカーになるだろう。自陣に引いて厚い守備組織を敷き、速攻を狙ってくるだろう。日本のオリンピック代表がブラジルと対戦したときの戦法。相手の強さを認め、なんとかひと泡吹かせてやろうという狙いだ。
順調に力を伸ばし、世界の強豪に伍して戦うことができるようになった「加茂日本」。だが、少し力の落ちるチームがこのように割り切って守備を固めてくるゲームの経験はない。
加茂監督は、就任当初から「アジアの予選を勝ち抜くには、守りを固めてくる相手を攻め崩せるようにならなければならない」と語っていた。そのために、中盤の守備組織を強化し、そこから相手が帰陣する前に攻め込むチーム戦術を徹底してきた。
だが実際に守備を固める相手に対したときにその戦術がどこまで機能するか、それは未知数だ。
9月11日に東京の国立競技場で対戦するウズベキスタンは、固い守備とカウンターアタックで94年広島アジア大会を制覇したチーム。日本にとってはまず最初の「壁」となる。この相手にどういうふうに攻撃を組み立て、守備組織を崩すことができるか、そして相手のカウンターアタックをうまく処理できるか。
地味な相手ではあるが、アジア予選を突破してフランス・ワールドカップ出場を最大のターゲットとする日本代表にとってはこれまでの強豪との対戦よりずっと重要な意味をもった試合なのだ。
(1996年9月2日)
1993年から東京新聞夕刊で週1回掲載しているサッカーコラムです。試合や選手のことだけではなく、サッカーというものを取り巻く社会や文化など、あらゆる事柄を題材に取り上げています。このサイトでは連載第1回から全ての記事をアーカイブ化して公開しています。最新の記事は水曜日の東京新聞夕刊をご覧ください。