サッカーの話をしよう

No71 Jリーグのリストラは厳しさに不可欠

 Jリーグが一クラブあたりのプロ選手数を35人程度に制限し、近い将来に現在行われているサテライトJリーグを廃止する方向を決定した。
 この決定は、多くのメディアで「リストラ」と伝えられた。リストラ=リストラクチャーは「再構築」と訳され、組織の根本的な見直しを意味しているが、現在ではバブル崩壊後の「人員整理」のように使われている。今回もその意味を含んだものだと思う。

 Jリーグでは、選手育成のためにつくられたサテライトリーグのために、「本物のJリーグチーム」以外にもう一チーム、結果として丸々2チームにあたる約40人の選手をかかえなければならなくなった。
 94年はトップとサテラライトの登録を分けず、チーム全員でふたつのリーグを戦えばいいことになったので、本当なら30人たらずの選手数でも間に合うはずなのだが、現状では大半のクラブが相変わらず40人内外の選手をかかえ、しかもその大半がプロ契約となっている。
 必然的に、この人件費がクラブの財政を圧迫する。もしサテライトの選手20人をそっくりカットできれば、大幅な経費削減となるはず。その意味では、まさに「リストラ」ということができる。

 しかし今回の新方針は単なるリストラではない。日本サッカーの発展に必要な選手育成システムの「再構築」でもあるのだ。
 現在のシステムでは、高校あるいは大学を出た有力選手は直接Jリーグのクラブにはいり、プロとなる。だが、この時点でJリーグですぐ活躍できるのはほんのわずか。大半の選手はサテライトチームで2、3年過ごすうちに力が試されることになる。
 問題は、サテライトであっても「Jリーグのプロ選手」であるということだ。サテライトリーグには1万人以上はいる試合もある。女の子のファンもたくさん追いかけてくれる。スターになった気になっても仕方がない。多くの選手がそれだけで満足しているように見える。Jリーグのクラブはどんぶり勘定で有望選手を買いあさり、サテライトという名の温室でゆっくりと腐らせているのが現状なのだ。

 日本サッカーの5年後、10年後を担う選手がこれでいいわけがない。たしかにJリーグのクラブなら、いい環境でいいコーチングが受けられるだろう。しかしサッカー選手というのは、いい練習環境と同時に、厳しい実戦のなかから生まれてくるものなのだ。
 自クラブでの「育成」は20歳か21歳程度まで(そこまではアマチュア)とし、その時点で自チームでプロ契約(即戦力)できない選手は、いちど下部のリーグのクラブ、たとえば昇格を目指してしのぎを削るJFLや、地域リーグのクラブに放出する。
 あきらめて止めてしまう選手も多いだろう。しかしそこでがんばり、実力をつけ、認められてはい上がってくる者こそ、これからの日本サッカーに必要な選手なのだ。
 もちろん、最初から下部リーグのクラブにはいり、実績を示してJリーグのクラブに引き抜かれる選手もいるはずだ。

 こうした状況をつくりだすには、下部のクラブの環境整備、移籍システムの活性化(選手マーケットの創出)など、多くの問題をクリアしなければならない。一朝一夕で解決するわけはないが、早急に取り組まなければならないテーマだ。
 これはまさに、日本サッカーの選手育成システムの「再構築」にあたる。今回の「リストラ」には、そうした前向きの姿勢がある。

(1994年9月20日=火)
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