サッカーの話をしよう
No125 フットサル人気急上昇
去る11月9日、日本サッカー協会は来年2月に「第1回全日本フットサル選手権大会」を開催することを発表した。
「フットサル」とは、1チーム5人制のミニサッカーのこと。古くから世界の各地で、それぞれ独自のルールで行われていた。
日本でも、1977年に「ミニサッカー連盟」がつくられた。だが協会はあまり関心を示さず、連盟は乏しい資金で必死に普及活動を続けてきた。
ところが、国際サッカー連盟(FIFA)が88年に「ミニサッカーもサッカーのうちなので、各国の協会がしっかりと統括するように」と通達を出し、「ファイブ・ア・サイド」(5人制)サッカーという名称の下、初めてルールを統一した。そして翌89年1月には第1回の「世界選手権大会」をオランダで開催、日本も参加した。
FIFAはさらに昨年、この競技の名称を「フットサル」と改めた。ブラジルをはじめとしたラテン系の国々では、ミニサッカーは「室内サッカー」を意味する「フットボール・デ・サロン」と呼ばれてきた。それを縮めた名称だ。
こうしたFIFAの動きを受けて日本協会がようやく重い腰を上げたのが「日本選手権」なのだ。
ピッチの広さはテニスコート程度。ゴールはハンドボール用程度。ボールは通常小学生が使う大きさのもの。1チーム5人で、20分ハーフだが、交代はいつでも自由。しかも何度でも出場できる。
要するに、「いつでも、どこでも、だれでも」サッカーを楽しむというのが、フットサルの精神ということができるだろう。
チームゲームをするのはなかなか面倒なものだ。サッカーなら、1チーム最低11人そろえなければならない。手軽に楽しむというわけにはいかない。
さらに大きな問題はグラウンドの不足だ。競技人口の伸びに、グラウンド数がついていけないのだ。とくに都市部において、この問題は深刻だ。
そうした悩みを、フットサルは一気に解決する。もちろん、「大きな展開」や「激しいプレー」はできない(スライディングタックルは反則となる)。だが、パスを出して走る、ボールを受けて相手をかわす、GKの逆をとってシュートを決める、相手のプレーを読んで守るなど、サッカーの魅力の多くを、十二分に楽しむことができる。
Jリーグに刺激されて自分でもボールをけってみたくなった人たちを吸収し、フットサルはことし1年間で専用コート数や競技人口を飛躍的に伸ばした。人気低下ぎみのテニスコートをフットサル用につくり直した民間のスポーツ施設も少なくない。
ブラジルでは「サロン」出身の名選手も数多い。ジーコもそのひとりだ。彼の身のこなし、ボールとハーモニーを保ちながら相手の逆をとるプレーの基礎は、すべて「サロン」で身につけたものだ。
だが、これまで高校や小学生の「全国大会」が果してきた役割を見れば、「全日本選手権」は選手の「強化」より、フットサル、あるいはサッカーの「普及」に貢献するはずだ。
大事なのは「いつでも、どこでも、だれでも」というフットサルの精神を見失わないことだ。「常に男子3人、女子2人でプレーしなければならない」というローカルルールで、「楽しいサッカー」に徹している例もあると聞く。
コート、ボール、人数など、「公式ルール」にとらわれることなく、町のあちこちで「サッカー遊び」が見られるようになるのが、理想の姿のはずだ。
(1995年11月14日)
「フットサル」とは、1チーム5人制のミニサッカーのこと。古くから世界の各地で、それぞれ独自のルールで行われていた。
日本でも、1977年に「ミニサッカー連盟」がつくられた。だが協会はあまり関心を示さず、連盟は乏しい資金で必死に普及活動を続けてきた。
ところが、国際サッカー連盟(FIFA)が88年に「ミニサッカーもサッカーのうちなので、各国の協会がしっかりと統括するように」と通達を出し、「ファイブ・ア・サイド」(5人制)サッカーという名称の下、初めてルールを統一した。そして翌89年1月には第1回の「世界選手権大会」をオランダで開催、日本も参加した。
FIFAはさらに昨年、この競技の名称を「フットサル」と改めた。ブラジルをはじめとしたラテン系の国々では、ミニサッカーは「室内サッカー」を意味する「フットボール・デ・サロン」と呼ばれてきた。それを縮めた名称だ。
こうしたFIFAの動きを受けて日本協会がようやく重い腰を上げたのが「日本選手権」なのだ。
ピッチの広さはテニスコート程度。ゴールはハンドボール用程度。ボールは通常小学生が使う大きさのもの。1チーム5人で、20分ハーフだが、交代はいつでも自由。しかも何度でも出場できる。
要するに、「いつでも、どこでも、だれでも」サッカーを楽しむというのが、フットサルの精神ということができるだろう。
チームゲームをするのはなかなか面倒なものだ。サッカーなら、1チーム最低11人そろえなければならない。手軽に楽しむというわけにはいかない。
さらに大きな問題はグラウンドの不足だ。競技人口の伸びに、グラウンド数がついていけないのだ。とくに都市部において、この問題は深刻だ。
そうした悩みを、フットサルは一気に解決する。もちろん、「大きな展開」や「激しいプレー」はできない(スライディングタックルは反則となる)。だが、パスを出して走る、ボールを受けて相手をかわす、GKの逆をとってシュートを決める、相手のプレーを読んで守るなど、サッカーの魅力の多くを、十二分に楽しむことができる。
Jリーグに刺激されて自分でもボールをけってみたくなった人たちを吸収し、フットサルはことし1年間で専用コート数や競技人口を飛躍的に伸ばした。人気低下ぎみのテニスコートをフットサル用につくり直した民間のスポーツ施設も少なくない。
ブラジルでは「サロン」出身の名選手も数多い。ジーコもそのひとりだ。彼の身のこなし、ボールとハーモニーを保ちながら相手の逆をとるプレーの基礎は、すべて「サロン」で身につけたものだ。
だが、これまで高校や小学生の「全国大会」が果してきた役割を見れば、「全日本選手権」は選手の「強化」より、フットサル、あるいはサッカーの「普及」に貢献するはずだ。
大事なのは「いつでも、どこでも、だれでも」というフットサルの精神を見失わないことだ。「常に男子3人、女子2人でプレーしなければならない」というローカルルールで、「楽しいサッカー」に徹している例もあると聞く。
コート、ボール、人数など、「公式ルール」にとらわれることなく、町のあちこちで「サッカー遊び」が見られるようになるのが、理想の姿のはずだ。
(1995年11月14日)
1993年から東京新聞夕刊で週1回掲載しているサッカーコラムです。試合や選手のことだけではなく、サッカーというものを取り巻く社会や文化など、あらゆる事柄を題材に取り上げています。このサイトでは連載第1回から全ての記事をアーカイブ化して公開しています。最新の記事は水曜日の東京新聞夕刊をご覧ください。