サッカーの話をしよう
No144 アトランタに向け十分な準備を
日本の若者たちの能力、チーム戦術をやり抜こうとするモラルの高さ、そして精神的な強さを見た2週間だった。「ここ」という場面で自分のもっているいちばんいいものを出すことができる選手たちは、本当に頼もしく見えた。
だが同時に、「アトランタ」オリンピックのアジア最終予選は、日本サッカーの「弱点」を再確認させる大会でもあった。それは、これまで何度も指摘されてきた「筋力不足」だ。
オリンピックの決勝大会で日本の選手たちが才能を発揮するには、サウジアラビアやイラク並の筋力が必要となる。それができなければ、グループリーグを突破するどころか、勝ち点をあげることさえ難しい。
7月20日から8月3日にかけて行われる「アトランタ」オリンピックのサッカー競技。男子は16チームが出場し、4チームずつでのリーグ戦の後、ベスト8からは勝ち抜きのトーナメントになる。
4つのグループには、開催国アメリカのほか、ヨーロッパ、南米、アフリカから1チームずつがシードされる。そしてその他の12チームが、基本的に大陸が重ならないように抽選で振り分けられる。
抽選会は5月5日、アトランタで実施されるが、競技はアトランタ市内では一切行われない。アトランタから西へ約250キロのアラバマ州バーミンガム、連邦首都ワシントン、フロリダ州のオーランドとマイアミ。以上の4都市で「グループリーグ」が開催され、各グループの上位2チームが準々決勝に進出する。準々決勝はバーミンガムとマイアミ。そして準決勝、3位決定戦、決勝の4試合が、アトランタの北東約60キロのジョージア州アセンズで開催される。
教育の町として知られるアセンズでは、8万5000人を収容する州立大学所有のスタンフォード・スタジアムが舞台となる。アメリカでも6番目に大きなスタジアムだ。全32試合、200万枚を超す入場券が発行される巨大な大会である。
今回のオリンピックのサッカーは出場資格が23歳以下(1973年以降の生まれの者)となっているが、決勝大会ではこの規定外の選手を3人まで使うことができる。23歳以下のチームでもワールドカップの優勝候補とまでいわれるブラジルはドゥンガやベベットを補強する予定だと聞くし、アルゼンチンも世界最強FWバティストゥータが出てくるはずだ。
ただしヨーロッパのチームはこの3人を使わない方針だという。代表チームの活動は6月いっぱい。7月からは選手の休養と、各クラブのリーグ開幕へ向けての準備期間となる。7月下旬からの大会にスター選手を出させることはできないという判断だ。
日本も「予選を勝ち抜いたチームで」という声もある。しかし、アメリカで少しでもいい成績を残すためには、与えられた条件はフルに生かすべきだろう。
いずれにしても、1日も早く決勝大会を戦うチームの方針を決定し、動きはじめることが大事だ。そして候補選手の合宿は、数日間ずつでも4月中にスタートし、意識を高く保つと同時にチーム戦術をさらに徹底しなければならない。
Jリーグの前期が終了する5月下旬からが本格的な「チームづくり」だが、そのときには、まず休息を十分にとり、アメリカの暑さのなかで強豪と戦うための体力・筋力づくりから始める必要がある。
開幕の7月20日に、与えられた条件下で現在の日本で考えうる最高のチームを送り込むためには、無駄にできる時間は、すでに1日たりとてないのだ。
(1996年4月1日)
だが同時に、「アトランタ」オリンピックのアジア最終予選は、日本サッカーの「弱点」を再確認させる大会でもあった。それは、これまで何度も指摘されてきた「筋力不足」だ。
オリンピックの決勝大会で日本の選手たちが才能を発揮するには、サウジアラビアやイラク並の筋力が必要となる。それができなければ、グループリーグを突破するどころか、勝ち点をあげることさえ難しい。
7月20日から8月3日にかけて行われる「アトランタ」オリンピックのサッカー競技。男子は16チームが出場し、4チームずつでのリーグ戦の後、ベスト8からは勝ち抜きのトーナメントになる。
4つのグループには、開催国アメリカのほか、ヨーロッパ、南米、アフリカから1チームずつがシードされる。そしてその他の12チームが、基本的に大陸が重ならないように抽選で振り分けられる。
抽選会は5月5日、アトランタで実施されるが、競技はアトランタ市内では一切行われない。アトランタから西へ約250キロのアラバマ州バーミンガム、連邦首都ワシントン、フロリダ州のオーランドとマイアミ。以上の4都市で「グループリーグ」が開催され、各グループの上位2チームが準々決勝に進出する。準々決勝はバーミンガムとマイアミ。そして準決勝、3位決定戦、決勝の4試合が、アトランタの北東約60キロのジョージア州アセンズで開催される。
教育の町として知られるアセンズでは、8万5000人を収容する州立大学所有のスタンフォード・スタジアムが舞台となる。アメリカでも6番目に大きなスタジアムだ。全32試合、200万枚を超す入場券が発行される巨大な大会である。
今回のオリンピックのサッカーは出場資格が23歳以下(1973年以降の生まれの者)となっているが、決勝大会ではこの規定外の選手を3人まで使うことができる。23歳以下のチームでもワールドカップの優勝候補とまでいわれるブラジルはドゥンガやベベットを補強する予定だと聞くし、アルゼンチンも世界最強FWバティストゥータが出てくるはずだ。
ただしヨーロッパのチームはこの3人を使わない方針だという。代表チームの活動は6月いっぱい。7月からは選手の休養と、各クラブのリーグ開幕へ向けての準備期間となる。7月下旬からの大会にスター選手を出させることはできないという判断だ。
日本も「予選を勝ち抜いたチームで」という声もある。しかし、アメリカで少しでもいい成績を残すためには、与えられた条件はフルに生かすべきだろう。
いずれにしても、1日も早く決勝大会を戦うチームの方針を決定し、動きはじめることが大事だ。そして候補選手の合宿は、数日間ずつでも4月中にスタートし、意識を高く保つと同時にチーム戦術をさらに徹底しなければならない。
Jリーグの前期が終了する5月下旬からが本格的な「チームづくり」だが、そのときには、まず休息を十分にとり、アメリカの暑さのなかで強豪と戦うための体力・筋力づくりから始める必要がある。
開幕の7月20日に、与えられた条件下で現在の日本で考えうる最高のチームを送り込むためには、無駄にできる時間は、すでに1日たりとてないのだ。
(1996年4月1日)
1993年から東京新聞夕刊で週1回掲載しているサッカーコラムです。試合や選手のことだけではなく、サッカーというものを取り巻く社会や文化など、あらゆる事柄を題材に取り上げています。このサイトでは連載第1回から全ての記事をアーカイブ化して公開しています。最新の記事は水曜日の東京新聞夕刊をご覧ください。